研究概要 |
強力な骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネート(BP)は前立腺癌や乳癌等の骨転移性腫瘍,骨粗鬆症,骨形成不全症および多発性骨髄腫等の骨吸収亢進性疾患に対して用いられており,現在世界中で2億人に投与されている.しかし,2004年Ruggieroらがビスフォスフォネート服用患者の顎骨の壊死および露出という予期せぬ副作用を報告して以来,ここ数年で数千人の発症が報告されている.側鎖にアミノ基を含む窒素含有BP(NBP)NBPは強力な骨吸収抑制作用を有すが,顎骨壊死の多くはNBPにより発症する.一方,窒素非含有BP(non-NBP)の骨吸収抑制作用は微弱であるが,顎骨壊死の報告はほとんどない.我々のこれまでの研究によりNBPの引き起こす炎症・壊死はnon-NBPにより抑制されるという結果を得ている.我々はNBPの代用薬としてnon-NBPに切り替える事により消炎,腐骨の早期離開,および骨の再形成を促進の臨床応用を試みており,いずれも良好な結果を得ている.当科におけるビスフォスフォネート投薬歴のある患者を統計学的調査中であり,結果を分析し,顎骨壊死発生に関連した情報が得られると思われる.これらの情報をもとに学会発表および論文発表し,医師,薬剤師等各方面への情報発信を続ける予定である.また,顎骨壊死モデルマウスを作製する事により,NBP+non-NBPの併用投与をマウスにおいて炎症・壊死の抑制の効果を評価する事が可能である.腫瘍骨転移モデルマウスの作製も継続していき,NBP+non-NBPの併用投与においてBPの抗腫瘍作用について検討することにより,骨転移性腫瘍に対し投与されている場合においてNBPを休薬する事無く顎骨の骨髄炎および壊死を抑制し,かつ抗腫瘍作用を増強出来る可能性がある.このことから,本研究の意義は極めて大きいと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ビスフォスフォネートのもつ抗腫瘍作用については現在論文投稿準備中である.また,顎骨壊死モデルマウスの作製において,マウスはヒトと同様にビスフォスフォネート剤の連続投与後,抜歯により顎骨壊死を発症しないため,口腔内細菌との関連も検討中であるため,目的通りには至っていない.
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