研究概要 |
21世紀の歯科医学における戦略的研究課題の一つは歯の再生と考えている.近年,マウス歯胚細胞を用いた歯の再生医療の研究が活発に行われるようになり,失われた歯を取り戻すことが現実となりつつあり,今後,ヒト細胞を用いた歯の再生医療への応用が期待される.再生医療の細胞源として注目を浴びている間葉系幹細胞は様々な間葉系細胞への分化能を有する細胞であるが,間葉系幹細胞の歯原性細胞への分化能を示した報告は非常に少ない.本研究では,ヒト細胞を用いた歯の再生医療の開発を目指し,当教室で樹立したヒト骨髄由来間葉系幹細胞とマウス由来エナメル芽細胞株との上皮-間葉相互作用を応用した生物学的手法により,ヒト骨髄由来の間葉系幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導を試み,成熟した象牙質や部分的な歯を再生することを目的とした.平成22年度は,in vitroにおける上皮-間葉相互作用を単層共培養法,トランスウェルを用いた共培養法,重層共培養法,三次元培養法などで再現している.その中の重層培養法において,間葉系幹細胞をマイトマイシンCで処理した後,エナメル芽細胞を播種するときれいな上皮コロニーが形成された.現在,象牙芽細胞のマーカー遺伝子の発現に関して解析しており,間葉系幹細胞の象牙芽細胞への分化を確認中である.同時に,間質系細胞に形態形成に関与するShhやWnt遺伝子を導入し,同様の実験を行い,形態形成に及ぼす影響を解析中である.
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