【平成22年度】(1)悪性黒色腫株のB16melanoma(以下、B16)を購入し、培養にて増殖させ保存した。(2)抗腫瘍薬である5-FUをマウスに投与し、7日目前後でnadirといわれる骨髄抑制が起こることを末梢血液中の血算値と大腿骨骨髄像をHE染色で確認した。(3)免疫賦活剤でアジュバンド効果のあるLPS、CpGをマウスに投与して炎症性サイトカインが、血液中に生産されることをELISA法にて確認した。以上から、担腫瘍モデルマウスの確立と抗悪性腫瘍薬およびアジュバンドの効果を確認することができた。 【平成23年度】(1)B16を野生型マウスに皮下注射し、生着することを確認した。その結果、末梢血液中に3%程度常在するGr-1陽性CD11b陽性細胞が、腫瘍の成長に伴って増殖してくることをフローサイトメトリーにて確認した。この細胞種はMDSC(myeloidderivedsuplessivecells)として知られているもので、悪性腫瘍の中心部に存在していることや転移に関連しているものとされている。また、MDSCの全てがCD45.2を発現していて、腫瘍由来ではなく宿主由来のものであることがわかった。さらに、B16を生着させた状態で、5-FUを投与して末梢血中のMDSCを観察したところ、好中球減少症としてのnadirである7日前後では1%以下に減少していることが確認された。5-FUの抗腫瘍効果を維持しつつ、nadirを補償する目的で、B16が生着した状態で5-FUを投与する前にCpGを投与した。その結果、MDSCはnadirでも平常時の2倍程度にまで増加していることが確認された。このことは、5-FUの副作用であるnadirがCpG投与によって抑えられていることを示唆するものである。 以上から、交付頂いた2年間で悪性腫瘍モデルマウスを確立し、使用する薬剤が生体で作用することを確認することができた。
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