骨分化能の高い智歯歯髄由来間葉系幹細胞(MSCs)を単離・同定し、効率的な骨再生を行うことを目的に、抜去智歯を形成段階に応じて歯冠完成期、歯根形成期、歯根完成期に分類し、それぞれのMSCsを単離した。in vitro実験による骨分化能解析および骨折モデルマウスを用いたin vivo骨形成能解析を行った。また、CD349マーカーを用いてMSCsを分離し、in vitroにおける骨分化能、骨折モデルマウスを用いた骨形成能解析を行った。 平成23年度は、インフォームド・コンセントを行い同意の得られた症例より、in vitroにおいて、歯根完成期で他の形成期と比較し有意に骨分化能が優れていた。骨折モデルマウス解析では、コントロール群と比較し骨形成能は高かったが、形成期による差は見られなかった。CD349の発現を指標として分離したCD349(+)MSCsは、CD349(-)MSCsと比較して、in vitroでは、歯根完成期のCD349(+)MSCsで有意に骨分化能が高いことが分かった。また、骨折モデルマウスでは歯冠完成期のCD349(+)MSCsで骨分化能が有意に高い結果であった。 in vitroの環境下では歯根完成期において他時期由来MSCsと比較して高い骨形成能を有していることが分かった。また、CD349の発現を指標として単離したCD349(+)MSCsは、CD349(-)MSCsと比較して骨分化能に優れている細胞であることが、in vivo解析により明らかとなった。 以上の解析により、将来、智歯歯髄由来MSCsを用いた細胞治療を行う際に、基盤となる知見を得ることができることから、大変意義ある研究であると思われる。
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