本研究では、独自に開発したマウス同系再生軟骨移植の実験系に、各種の組織反応抑制因子(免疫特権関連因子)の遺伝子改変マウスを導入して、足場素材を含有する再生組織における組織反応のメカニズムを解明し、再生軟骨医療の発展に貢献することを目指している。免疫特権関連因子のノックアウトマウスを用いた再生軟骨移植における機能検討では、C57BL/6Jマウス(WT)およびFasL機能不全マウス(C57BL6/J-gld/gld(gld))由来耳介軟骨細胞をポリ乳酸足場素材に播種して再生軟骨を作製し、WT背部皮下へ同系移植して経時的に組織学的・免疫組織化学的検討を行った。その結果、gld再生軟骨では、トルイジンブルー染色やGAG定量で、WT再生軟骨に比較し基質産生の低下を認めた。F4/80陽性細胞はgld再生軟骨で密にみられ、軟骨細胞のFasLによるマクロファージの局在制御が推察された。また、再生軟骨組織のヒト耳介軟骨細胞において、成熟刺激で基質産生を誘導したところFasL遺伝子の発現に変化はなく、むしろマクロファージ様細胞RAW264との共培養により発現が上昇した。共培養時の培養上清をプロテオームアレイにより解析し、RAW264単独群と比較したところG-CSFが高値を示した。G-CSFを軟骨細胞の基質産生誘導時に添加すると、FasLの発現が上昇することが確認された。更に、再生軟骨組織の移植前培養にG-CSFを添加したところFasL発現が誘導され、無添加の群と比較し移植後のマクロファージの減少と基質の蓄積が観察された。軟骨細胞とマクロファージとの相互作用により分泌される因子が軟骨細胞にFasL発現を促すメカニズムを応用し、移植後の組織反応を制御できる可能性が示唆された。
|