研究概要 |
【目的】これまでティッシュエンジニアリングの手法を用いて培養口腔粘膜の開発と臨床応用を行い、良好な結果を得ているが、培養粘膜の作製には組織片採取から手術までの期間が限定されること、採取した細胞の保存ができず複数回の手術に対応できないという欠点があった。そのため代表者は、凍結保存細胞による培養粘膜を作製したところ、短期間の保存期間では通常の培養粘膜と同等の性質が維持できることが示唆された。しかしながら、実際の臨床を想定した場合、長期間の細胞保存が必要な場合が多いため、凍結保存期間による細胞活性の低下を防ぐ対策が必要となる。そこで本研究は、より活性の高い凍結培養細胞を得るために、口腔粘膜上皮前駆・幹細胞を単離することを目的とした。【材料と方法】口腔外科外来小手術時に同意の得られた患者の余剰口腔粘膜を採取、上皮細胞を培養し、20μmの孔を有するナイロンメッシュを用いて、小型細胞集団を選別し(Izumi K, JDR 2007)、凍結保存後の細胞を用いて細胞増殖につき検討を行った。また同細胞で培養粘膜の作製を行い組織学的評価を行った。【結果】凍結保存を行った群と凍結保存を行わなかった群の粘膜上皮前駆/幹細胞と考えられる細胞集団を培養して細胞増殖数を比較したところ、統計学的な差は認められなかった。また小型細胞集団で作製された培養粘膜において、凍結保存を行った群と凍結保存を行わなかった群で上皮細胞の活性に明らかな差はなかった。【考察および今後の展望】通常の培養細胞に比べ、選別された小型細胞集団の活性が高いことが予想され、凍結保存後の細胞においても小型細胞集団では細胞活性が高いことが示唆された。
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