研究概要 |
口腔扁平上皮癌細胞の浸潤転移を抑制し、腫瘍細胞を死滅させる分子標的治療法の開発を目指した。Rasは非常に多くのシグナル伝達も基点をなす重要な分子であり、細胞の癌化に重要な役割果たしているため、癌治療の重要な分子標的となりうる。本研究において、PKCα選択的阻害剤であるsafingolとゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTaseI)阻害剤との併用効果を検討した結果、safingolとGGTI-298、GGTI-2147で併用薬剤の相乗効果を認めた。またGGTI-298とsafingolを併用することで,それぞれの単独処理ではみられなかったアポトーシスを示すsubG_Iの増加とDNAラダーの顕著な増加がみられた。 次にGGTasel阻害剤に着目した。低分子量Gたんぱく質が腫瘍原性を発揮するためには、FTaseとGGTaseIによる翻訳後の修飾が必要とされている。GGTaseIに対する阻害剤GGTI)は、RasやRhoを阻害するとされている。Rasファミリーは細胞増殖、アポトーシスなど、Rhoファミリーは細胞骨格、接着などに関与することが知られている。GGTIで処理すると細胞は円形化し、アクチンストレスファイバーと細胞突起の消失がみられた。経時的に低分子量Gタンパク質をイムノブロット法で検出したところ、Rasの下流で働くRalB,細胞骨格,細胞増殖に関与するRhoAについては経時的にプレニル化されないunprenyl化タンパクの増加がみられた。caspase非依存的にアポトーシスを誘導するsafingolと分子標的治療薬の中でも新規のGGTIとの併用は、safingolは抗腫瘍効果、GGTI-298は浸潤能を抑制する働きを認めるため、抗癌剤耐性の克服、転移の抑制に対して大いに貢献できると考えられた。
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