研究概要 |
上皮間葉移行にかかわる遺伝子として同定されたSnail, SlugなどのSnail family 遺伝子は、個体の初期発生、器官形成、癌浸潤などに多様な作用をする転写因子群とされている。唾液腺発達においても上皮間葉移行が引き金となり、器官発達が進むことが報告されている。昨年度の本研究では唾液腺発達におけるSnail family 遺伝子は、唾液腺の分枝発達(Branching)がすすむ胎生E13.0-E14.0に発現は上昇し、その遺伝子発現とタンパク発現は唾液腺上皮細胞に認められることを明らかにした。 本年度は、マウス胎仔顎下腺の器官培養実験で、snail, slugに特異的なsiRNAをそれぞれ顎下腺原基に導入すると、Slugsi晒A導入でSnail発現が上昇し、Snail siRNA導入でSlug発現上昇し、それぞれの唾液腺組織での発現が相補的であることが示された。次に、Snail, Slug双方に対するsiRNAを導入して培養すると、対照群に比べて有意に顎下腺発達は抑制された。特に分枝発達が抑制された。 以上より、snail,slug遺伝子は発達過程の唾液腺組織に発現し、唾液腺発達の分枝発達を促進する効果があることが示唆された。 次いで、Snail,Slugを組み込んだアデノウイルスをマウス顎下腺の器官培養で顎下腺原基にウイルスを感染させると、導入遺伝子は主に唾液腺上皮細胞に強く発現され、顎下腺の発達、分枝発達が促進された。その発達促進は感染ウイルス量MOI依存的であった。 以上より、マウス顎下腺発達において、Snail family遺伝子は分枝発達をに関与していることが明らかとなった。そのSnail family遺伝子で制御される遺伝子発現については現在も検索中である。
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