ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌の原因ウイルスであることが知られているが、高リスク型であるHPV16型、18型が近年、口腔扁平上皮癌においても関連することが注目されている。頭頸部癌においてはHPV陽性群では、陰性群に比して放射線療法や化学療法に対する感受性が良く、予後が良好という報告もある。申請者は、予備実験において、型に関わらず、HPV遺伝子を有する口腔扁平上皮癌をPCR法にて同定し、その中から陽性、陰性症例を各10例抽出した。ウイルス感染が確認された症例および確認されない症例における形態学的解析において明らかな違いは確認できなかった。一方、ウイルスDNAの存在は感染を示すものの、発癌やウイルス感染による癌の形質変化を意味するわけではなく、ヒト遺伝子へのウイルスDNAの取り込みが必要である。ウイルスの取り込みを確認するため、転写産物であり、種々の癌遺伝子との関連が知られているE6、E7タンパクの発現を免疫組織学的に検討したが、非特異的反応が著明であり、評価が困難であった。現在染色条件に関して検討中である。また、子宮頸癌におけるウイルスの取り込みの指標であるp16タンパクに関し、免疫組織学的検討を行うための予備実験を終了した。 ウイルスDNAの取り込みに関し、検討中であるが、癌組織中にHPV遺伝子が存在する症例および存在しない症例を抽出することができたため、今後、症例の詳細な後ろ向きの解析によりウイルス陽性および陰性頭頸部扁平上皮癌の特徴を明らかにすることが出来ると予想される。
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