本研究は、歯の再生に用いる新規細胞供給源を開拓し、幹細胞を用いた歯科再生医療の実現に向けた基礎的研究データを得ることを目的としている。当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽幹細胞株を用いて、硬組織形成細胞の分化誘導実験モデルの確立を中心に研究を行った。 その結果、象牙芽幹細胞をBMP-2で誘導した場合に比べて、β-GP含有石灰化誘導培地で培養を行った細胞群がより高いALP活性を示した。石灰化誘導培地で象牙芽幹細胞を培養すると、培養2日の早期より細胞外に線維状の細胞外基質の産生が認められ、培養14日では細胞外基質により細胞の殆どが被われ観察できなくなった。また線維状細胞外基質は複雑に絡み合い、シャーレ底面から細胞と共に容易に剥離可能なシート状形態を呈していた。石灰化誘導培地で培養した細胞をアリザリンレッドで染色を行うと、線維状細胞外基質にアリザリンレッド陽性を示したことから、線維状細胞外基質に直接カルシウムの沈着が生じていると考えられた。カルシウム量の定量を行ったところ、線維性細胞外基質が出現する培養2日後から僅かにカルシウムの検出が認められ、培養日数の経過に伴ってカルシウム量の増加が確認された。樹立した象牙芽幹細胞株の経代を持続したところ、経代80代を超えても細胞の増殖能、細胞形態、GFP産生能を保持しており、また各分化誘導実験においても安定的な性格を示した。 以上より、樹立した象牙芽幹細胞から硬組織形成細胞の分化誘導実験モデルの構築が確立できたと考えられ、今後の研究に応用可能であると判断した。
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