研究課題/領域番号 |
22791977
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
辻極 秀次 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70335628)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / GFP / 歯髄 / 再生医学 / 骨髄 |
研究概要 |
当該年度研究では骨髄幹細胞を歯牙構成細胞へ分化誘導し歯科再生医療へ応用する為の基礎的研究データを得るため、象牙芽細胞遺伝子発現プロファイルからリプログラム因子絞り込みに必要な骨髄由来間葉系幹細胞の樹立と樹立細胞の性状解析を行った。また前年度研究に引き続き既に樹立した硬組織形成象牙芽細胞を用いて電子顕微鏡による観察を行った。 骨髄組織からの間葉系幹細胞の樹立では、GFPトランスジェニックマウスの骨髄組織および粉砕骨組織からの細胞樹立を試みた。長期間の継代培養では骨髄由来の細胞は継代を経るごとに増殖活性を消失したが、粉砕骨から得られた細胞では高い増殖活性を長時間保っていた。骨髄から得られた細胞と粉砕骨から得られた細胞の形態には相違が見られ細胞の種類が異なると考えられた。また皮質骨から得られた細胞は、in vitro条件における石灰化培地によりアリザリンレッド染色陽性を示し、軟骨細胞および脂肪細胞への分化能も確認されたことから、骨髄由来間葉系幹細胞である可能性が示唆された。 電子顕微鏡による観察では既に明らかになっていた象牙芽細胞が産生するコラーゲン基質の石灰化について焦点を絞り解析を行った。培養細胞は二重幕で被われた形態的に基質小胞と考えられる構造物を形成していた。また基質小胞を核としてコラーゲン基質上でカルシウム針状結晶が成長する様子が観察された。以上のことから本細胞は培養条件下においても、正常の象牙質が石灰化する過程と非常に類似した石灰化過程をとることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究では象牙芽細胞遺伝子発現プロファイルからリプログラム因子絞り込みに必要な骨髄由来間葉系幹細胞の樹立と樹立細胞の性状解析を行った。また硬組織形成象牙芽細胞を用いて電子顕微鏡による観察を行った。本研究成果は前年度研究計画で予定していた計画とほぼ同様の進行状況であり、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度研究では骨髄幹細胞を歯牙構成細胞へ分化誘導し歯科再生医療へ応用する為の基礎的研究データを得るため、象牙芽細胞遺伝子発現プロファイルからリプログラム因子絞り込みに必要な骨髄由来間葉系幹細胞の樹立を行った。今年度実験計画は樹立した骨髄由来間葉系幹細胞の詳細な細胞生物学的解析、分子生物学的解析を行う。また骨髄由来間葉系幹細胞および硬組織形成象牙芽細胞のin vitro条件下による解析に加えてin vivo条件下による解析を行い、形成する硬組織および遺伝子発現の相違について解析を行う。 ・骨髄由来間葉系幹細胞の性状解析:細胞の樹立はGFPトランスジェニックマウスから得られた骨髄由来細胞を移植した野生型マウスを用いる。骨髄細胞の調整はGFPマウス由来細胞をBMT処置したマウスから骨髄細胞および骨髄細胞回収後の骨組織から粉砕骨を回収する。骨髄細胞および粉砕骨を酵素処理し細胞を回収、得られた細胞を確認後、細胞の由来について検討するため継代にしたがって細胞数の変化する様子をGFP蛍光により観察する。また得られた培養細胞はFACS解析により幹細胞等、細胞特異的なタンパク質マーカーの検討を行う。また既に樹立した歯髄由来象牙芽細胞との遺伝子発現比較を行う。 象牙芽細胞および骨髄間葉系幹細胞のin vivo条件下における細胞分化:骨髄および歯髄から得られた細胞を石灰化誘導培地で誘導した後、マトリゲルおよびTCP顆粒と共にSCIDマウス背部皮下および大腿骨部位に移植する。経時的に試料を摘出、免疫組織化学的染色組もしくはIn situ hybridizationを施し織学的に観察する。また摘出した試料からRNAを抽出、cDNAを合成しRT-PCR法にて発現遺伝子の検討を行う。
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