研究概要 |
ヒトAngiogenin(ANG)に相同するマウスANGは6種のアイソフォームが存在する.マウスANG-1はヒトAN照Gと相同性が最も高く,組織分布(主に肝臓)が同じであり,血管新生能をもつため,マウスANG-1をノックアウトし,その影響からANGの生理的機能を調べた.KOマウスは外見上ほぼ正常に産まれてくる.成長や生殖にも大きな異常は認められない.野性型とKOマウスの胃,直腸,腎臓,肝臓,肺,脳,心臓,脊髄から,タンパクとRNAをそれぞれ採取した.マウスANG-1はすべての臓器でノックアウトされていた.上記の臓器の組織切片を作製し病理学的検索を行った.出血,梗塞,閉塞,狭窄,線維化,新生内膜肥厚などの血.管異常は認められなかった.マウスANG-2,3,4,5,6遺伝子の発現を調べたところ,すべての臓器で発現上昇を認めた.ANG-2は肺,ANG-3は前立腺,ANG-4は直腸,にそれぞれほぼ特異的に発現する.ANG-5,6の分布はよく分かっていない.循環血液中のANGの影響を排除するため,組織から細胞を単離しさらに検討を加えた.野性型とKOマウスの肝臓から血管内皮細胞を単離し培養した.野性型と比較して,KOマウスの血管内皮細胞の増殖は,抑制されていた.血清飢餓状態で培養すると,KOマウスの血管内皮細胞はストレスに感受性が高くアポトーシスが誘導されていた.また野性型とKOマウスの骨髄および脾臓から破骨細胞を分化誘導した.KOマウスでは破骨細胞の形成,吸収能ともに抑制されていた.さらに野性型とKOマウスの背部皮下にMatrigelを注入しMatrigel Plug Assayを行った.KOマウスでは野性型と比較し血管新生が抑制されていた.野性型とKOマウスの尾基部から1cm遠位の部分の表皮を2mm環状に剥ぎ取り,リンパ浮腫動物モデルを作製した.KOマウスでは野性型と比較しリンパ管新生が抑制されリンパ浮腫が認められた.以上からANGが血管新生やリンパ管新生や骨代謝に重要であることが明らかとなった.
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