研究概要 |
研究代表者による過去の実験結果から、口腔癌培養細胞の細胞間接着はSTATシグナルの活性化を誘導し、その誘導にはE-カドヘリンのホモフィリックな結合が不可欠であることが明らかになっていた。またSTATシグナルの活性化が細胞死を回避させることも示唆されていた。しかし、E-カドヘリンからどのような伝達経路でSTATシグナルの活性化に至るのか、そのメカニズムについては不明であった。そこで、他から報告があるRhoファミリー(Rac1,Cdc42)について検索を行った。口腔癌培養細胞をポリハイドロキシメチルプレート上で培養して細胞-細胞間接着に依存した細胞塊をサンプルとし、これらから蛋白質を抽出してウェスタンブロッティングを行ったところ、細胞種によってばらつきはあるものの、STATの活性化に引き続いてRac1およびCdc42がリン酸化される傾向があることが明らかになった。また、細胞-細胞外マトリックスを介したシグナル伝達についても検索したが、有意な結果は得られなかった。その理由としては、STATシグナルの活性化が誘導される因子は複数あり、特定のシグナル経路を明らかにすることが困難であったことが挙げられる。また、STAT3 siRNAを導入した培養細胞を用いて増殖能、遊走能、浸潤能について解析を行ったが、有意な差は認められなかった。したがってSTAT3シグナルの活性化は、癌細胞の細胞死を回避させて細胞活性を促すものの、増殖、遊走、浸潤における関与は少ないものと思われた。
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