研究概要 |
本研究代表者は抗癌剤耐性に関与する因子として知られるYB-1の機能について検討してきた。本研究では、唾液腺癌の抗癌剤耐性におけるYB-1の機能解析を目的とし、唾液腺癌、特に腺様嚢胞癌が他の口腔癌と比較して抗癌剤抵抗性を示す機序を解明する為に、間接蛍光抗体染色法、ウェスタンブロット法で腺様嚢胞癌細胞内のYB-1の局在・発現を検討し、更にTwo-HybridScreeningにてYB-1と唾液癌細胞内で相互作用する蛋白を同定した。 1,培養唾液腺癌細胞におけるYB-1の局在:腺様嚢胞癌細胞株(ACCS、ACCT)におけるYB-1の局在を蛍光抗体染色法にて検討したところYB-1は通常細胞質に局在していた。さらに、これらの細胞をCDDPや5-Fu等の抗癌剤を存在下で培養したところ、これらの抗癌剤に抵抗性を示した細胞ではYB-1の蛋白レベルが上昇していることがウェスタンブロット法にて確認され、YB-1が核に局在することが蛍光抗体染色法にて確認された。 2,YB-1相互作用蛋白の同定:YB-1と相互作用する蛋白を同定する目的でACCS細胞を用いてcDNAライブラリーを作成した。そのcDNAをpPC86発現ベクターに組み込み、pDBLeu発現ベクターに組み込んだYB-1とともに酵母細胞に遺伝子導入してTwo-Hybridスクリーニングを行ないYB-1相互作用蛋白を検索したところ、転写因子を含む17個の細胞内蛋白が得られた。さらにDNAマイクロアレイハイブリダイゼーションにて遺伝子の発現変化を検討したところ、上記Two-Hybridスクリーニングにて得られた蛋白遺伝子が複数個発現上昇していることが確認された。これらの蛋白の中でもDNA障害性ストレスに関係する蛋白である蛋白2つに着目し、GST-pull down assayにてYB-1とのin vitroでの結合を確認した。また、ACCS細胞を用いた免役沈降法でもこれらの蛋白とYB-1の結合が確認できた。
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