近年、歯周組織再生に重要と考えられている歯根膜組織を採取し、in vitroにて培養・増殖させ得られた歯根膜由来細胞を基質と組み合わせて移植することで、歯周組織が再生される報告を散見する。これまでに歯根膜由来細胞の培養にさまざまな基質を用いる研究がなされている。そこで、移植可能な培養歯根膜由来細胞シートの開発を念頭に、羊膜を基質とした歯根膜由来細胞の培養を行い、免疫組織化学的な検討を加えた。羊膜は、帝王切開時の胎盤より採取したものを研究に供した。また歯根膜組織は、便宜抜歯等により得られた抜去歯歯根より採取した。得られた歯根膜組織の初代培養を行い、3~4代継代したものを歯根膜由来細胞とした。得られた細胞を羊膜上に播種し、約2週間の培養を行い、作成した羊膜上培養歯根膜由来細胞は、細胞増殖マーカーであるKi-67、間葉系マーカーであるvimentin、デスモソームに対するマーカーであるdesmoplakinおよびタイト結合に対するマーカーであるZO-1のそれぞれについて免疫染色を行った。歯根膜由来細胞は培養開始後約2週間で、羊膜上にて単層構造を示し、蛍光抗体法にてKi-67およびvimentin陽性細胞の局在を認め、desmoplakin、およびZO-1の発現を認めた。歯根膜由来細胞は羊膜上においても増殖し、なおかつ歯根膜様の性質を保持している可能性が考えられ、デスモソームおよびタイト結合といった強固な細胞間接着装置が存在することが示された。羊膜は歯根膜由来細胞の培養に適当な足場(基質)を形成し、また歯根膜由来細胞は個々の細胞ではなく、羊膜上にて一枚の細胞シートを形成しているものと考えられた。
|