研究課題/領域番号 |
22792000
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
雨宮 傑 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (90398389)
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キーワード | 移植・再生医療 / 再生医学 / 細胞・組織 / 歯学 / 臨床 |
研究概要 |
近年、歯周組織再生に重要と考えられている歯根膜組織を採取し、in vitroにて培養・増殖させ得られた歯根膜由来細胞を基質と組み合わせて移植することで、歯周組織が再生される報告を散見する。羊膜は抗炎症・感染抑制作用等を有し、細胞の培養基質として適していることがわかっている。これまでに歯根膜由来細胞の培養にさまざまな基質を用いる研究がなされている。われわれはこれまでの研究にて、移植可能な培養歯根膜由来細胞シートの開発を念頭に、羊膜を基質とした歯根膜由来細胞の培養を行い、免疫組織化学的な検討にて、PDL細胞は羊膜上にて増殖し、細胞間接着装置を有することを示してきた。今回、この羊膜上培養PDL細胞における培養細胞と羊膜の接着、すなわち細胞-基質問の接着について検討を加えた。方法として、智歯歯根の歯根膜より得たPDL細胞を使用し、羊膜は帝王切開時に得られた胎盤より採取した。3~4代継代したPDL細胞を羊膜上にて約2週間の培養を行った。羊膜上にて単層構造を呈したPDL細胞は、免疫組織化学的にvimentin、Ki-67が発現し、細胞-基質(羊膜)境には、基底膜構成細胞接着タンパクのlaminin5/10、基底膜構成コラーゲンのcollagen IV/VIIが発現していた。走査型電子顕微鏡像(SEM像)にて、PDL細胞は羊膜上で分化・増殖し、隣在する細胞間および羊膜と接着が観察されたことより、歯根膜由来細胞が羊膜に強く結合していると考えられた。以上より、PDL細胞は歯根膜としての性質を保ち羊膜上にて増殖するだけでなく、羊膜に強く結合し、基底膜を構成していると考えられた。 羊膜はPDL細胞の培養・増殖に適当な基質であり、なおかつ1枚の細胞シートを形成していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
羊膜を用いた歯根膜由来細胞培養シート作成の免疫組織学的検討について、昨年度にて実施をする予定であったが、研究に使用する抗体の入手ならびに試薬の調整に時間を要した。また、実験動物(ヌードマウス)の歯周欠損モデルへの培養シートの移植において、安定した再現性が得られなかったため達成度に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
実験動物(ヌードマウス)への移植実験を実施する。予測されたとおり、歯周欠損モデルへの培養シートの移植では安定した再現性が得られなかったため、細胞を一箇所に留めることが可能であり免疫寛容が高い腎被膜下への細胞移植法を応用する。すなわち、培養シートを羊膜ごと象牙質切片上に静置し、腎皮膜下移植を行い、移植後における象牙質への生着能および経時的変化を組織学的に評価する。羊膜を基質とすることで、細胞の足場を形成され象牙質面と接着し歯周組織の新生が見られるものと予想している。得られた研究データを基に、羊膜上培養歯根膜由来細胞シート作成の培養技術に改良を加え、常に均質な性質を持った臨床応用可能な培養歯根膜由来細胞シートを作成するシステムを構築する予定である。
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