研究課題
これまでのわれわれの研究で、顎関節症状患者において、関節滑液中のヒアルロン酸分子量が健常人と比較して低下していること、そして低分子量ヒアルロン酸が破骨細胞の分化および骨吸収活性を増強することにより、骨破壊を亢進することを報告しており、ヒアルロン酸の分子量の低下が顎関節を含む変形性関節症の病態形成に関与していることを証明している。しかし、軟骨および軟骨基質に対する作用については知見が得られていない。軟骨の主要なプロテオグリカンであるアグリカンは、機械的刺激に対する緩衝剤として軟骨を保護することが知られており、アグリカンの喪失が関節炎を惹起することが報告されている。これまでアグリカンの分解因子としてマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を中心とした研究が行われてきたが、近年の研究で、より初期のアグリカン分解タンパクとして、アグリカナーゼ(ADAMTS4、ADAMTS5)が同定され、注目を集めている。平成22年度に行った一連の研究結果から、低分子量ヒアルロン酸がアグリカナーゼの発現を遺伝子レベル、タンパクレベル両者において増強する結果が得られた。それに伴いアグリカンの分解活性も亢進することが示された。この結果から、ヒアルロン酸の低分子化は破骨細胞だけでなく、軟骨細胞およびその周囲マトリックスに対しても生物学的作用を有し、変形性顎関節症の病態形成に関与していることが示された。現在、その詳細なメカニズム解明のため、細胞内シグナル伝達に注目した研究を継続中である。
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