研究概要 |
ナノカーボン素材のフラーレンが顎関節における変形性関節症に対して有用な抗軟骨変性因子となり,またIL-1ra遺伝子等の遺伝子治療のベクターとなり得る可能性に注目した. ウサギ膝関節由来滑膜細胞HIG82細胞にメカニカルストレス(伸展刺激)を与え,所定の時間に培養上清を回収し,ELISA Kit (R&D system社)を用いてIL-1β, IL-1ra, PGE2の濃度を測定した.次いでHIG82細胞にフラーレン(三菱化学より供与)を作用させたところ,これらの炎症性メディエーターが明らかに減少した.次に,以前別プロジェクトとして超音波遺伝子導入法(Sonoporation法)を用いて滑膜細胞や口腔扁平上皮癌細胞へ遺伝子導入を行った経験がある.フラーレン単独でトランスフェクションの条件の最適化を図ったが,フラーレン単独で導入効率が悪かったので,前述のSonoporation法を併用した.超音波導入装置(ソニトロン2000)を用い口腔癌細胞にDNA・フラーレンを導入し,導入効果が高い条件を検討した.導入効率を高めるため,超音波造影剤(マイクロバブル)を併用した.まず,DNA・フラーレン複合体とマイクロバブル溶液を混合し,DNA・フラーレン/マイクロバブル複合体溶液を調製する.この調製したフラーレン溶液を細胞懸濁液に加え,さまざまな条件で超音波を照射する.24時間培養後,X-gal染色により導入細胞を測定し,導入効率を比較検討したところ,フラーレン単独に比較して,ソノポレーション法を用いた群で,明らかな導入効率の増加を認めた.
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