研究概要 |
申請者は変形性顎関節症の治療のために抗炎症性サイトカイン発現遺伝子を顎関節局所にフラーレンやソノポレーション法を用いて直接導入する方法を検討している.研究の特徴としては,遺伝子の運搬体にフラーレンやより直径の小さい超音波造影ガスを封入した新規リポソーム(ナノバブル:400~500nm)を応用し,深部組織への導入効率を増強することで,慢性顎関節炎治療に有効なサイトカイン濃度の発現を目的としている点である. 前年度はフラーレン単独でIL-1ra発現遺伝子導入を試みたが、導入効率が悪かったため、ソノポレーション法を併用したところ、導入効率が増強するのを確認した。 本年度は、ウサギ膝関節由来滑膜細胞HIG82細胞に抗炎症性サイトカインである抗TNF-α抗体発現プラスミドを用い、in vitroの系で導入実験を行った。結果としてin vitroにて効率のよい超音波の出力,照射時間,バブルリポソームの混入量,表面抗原(CD44)に対する抗体の混入比率を検討し,抗TNF-α抗体発現遺伝子の滑膜細胞への導入効率を20%以上となる条件を確立した。また、正常ウサギ顎関節での抗TNF-α抗体発現を確認したところ、正常ウサギ顎関節滑膜細胞での抗TNF-α抗体発現は確認されたものの,治療効果の得られる抗TNF-α抗体の顎関節局所濃度1.04×100000M/ml以上の濃度を安定して検出できなかった.これは,関節滑液の採取方法に問題がある可能性があるため,再度採取方法および検出方法を検討する必要がある.また,さらに導入効率を上げる方法としてナノバブルに付着させる滑膜表面抗体を変更することも視野に検討する予定である.
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