研究概要 |
本研究では,三次元患者モデルに対し,硬組織および軟組織に対応する三次元基準座標系の構築を高い再現性で行える手法を確立することを目的とした.硬組織に対する設定手法は,まず表面形状基準法によりYZ平面の設定を行い,これを作業平面と規定して外耳道上縁点の設定した.次にXYZ直交座標系を仮設定した後,XY平面が眼窩下縁の接面となるようにXYZ直交座標系を回転させ,得られた接点を眼窩下縁点と設定した.この位置でのXY平面をフランクフルト平面,YZ平面を正中矢状平面,XZ平面と前頭面と各々規定することで顎顔面骨格に対する基準座標系を構築した.また本手法による設定の再現性の検証を,検者内誤差,検者間誤差で行った.基準座標系の構築に先立ち設定しておいた6つの参照点の座標値のバラつきの程度を調べた結果,検者内誤差(n=10)の分散は最小で0.01mm以下,最大でも0.20mmであった.検者間誤差(n=10)での95%信頼限界では,X方向の最大幅が0.33mm,Y方向の最大幅が0.48mm,Z方向の最大幅が0.35mmであった.この結果より本法の再現性が極めて高いことが示された.一般に三次元6自由度を制御しながら高い再現性で基準点を指定することは困難である.そのため基準点の設定操作を二次元に拘束する作業平面が必要であると考えた.本研究では表面形状基準法でYZ平面を規定した後,これを作業平面として2つの基準点を設定した.これにより基準点の設定操作に用いるパラメータが2または1自由度に限定され,高い再現性で基準座標系を設定することが可能となった.さらに軟組織に対しては,硬組織に対応した表面形状基準法を考案し,硬組織と軟組織のYZ平面の一致度を比較した.抽出した二平面の二面角は平均で0,532°であった.また二平面の交線は平均でモデルの中心部から18.20mmであった.これにより硬・軟組織に近似したYZ平面の抽出が可能となり,硬組織および軟組織に対応する基準座標系の構築の可能性が示唆された.
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