平成22年度は、本研究の実施施設である慶應義塾大学病院倫理委員会にて本研究実施の承認を得た。さらに、DNAの解析をおこなう予定である東京都医学研究機構・東京都精神医学総合研究所(平成23年4月1日より財団法人東京都医学総合研究所に名称変更)においても倫理委員会にて本研究の承認を得た。また、研究協力施設の日野市立病院においても、現在、倫理委員会の申請手続きをおこなっている。 口腔外科手術のなかで最も一般的な下顎埋伏智歯抜歯患者を対象とし、三叉神経領域の外科的侵襲に伴う急性痛により中枢性感作が誘発されうるかを反復熱刺激による時間的加重試験を用いて評価するため、ユニークメディカル社製温・冷型痛覚計UDH-300およびデータ収集システムUAS-108Sを購入し、「時間的加重試験」を行うプロトコールの詳細を確立した。今後は、下顎埋伏智歯抜歯患者を対象とし、抜歯術前、抜歯翌日、抜歯1週間後にそれぞれ熱刺激による時間的加重試験を目標の被験者数に達成するよう順次実施予定である。 「DNAの抽出・精製」についてはボランティアの協力のもと口腔粘膜からのDNAを抽出・精製することを三菱化学メディエンス遺伝子検査部遺伝子検査グループとともに検討し、プロトコールを確立した。また、精製されたDNAは、匿名化後に財団法人東京都医学総合研究所に届けられ、分子精神医学研究チームに保存する予定である。十分な検体数が得られたのちに、中枢性感作の素因として、疼痛関連遺伝子の一つであるCatechol-O-methyltransferase (COMT)遺伝子の遺伝子多型が、中枢性感作の成立状況と関連するかを検討する予定である。
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