口腔外科手術のなかで最も一般的な下顎埋伏智歯抜歯患者を対象とし、三叉神経領域の外科的侵襲に伴う急性痛により中枢性感作が誘発されうるかを反復熱刺激による時間的加重試験を用いて評価した。そして中枢性感作が周術期の臨床的な痛みの程度や期間にどのような影響を与えるか、また、難治性疼痛との関連を検討した。 中枢性感作の素因として、疼痛関連遺伝子の一つであるCatechol-O-methyltransferase(COMT)遺伝子の遺伝子多型を分析し、中枢性感作の成立状況との関連を検討し、遺伝子多型に対応するテーラーメイド疼痛管理医療の基盤とし、臨床応用を目指した。 研究法法としては、下顎埋伏智歯抜歯術患者に対し、術前後の疼痛VAS(Visual Analog Scale)および反復熱刺激による時間的加重試験を行い急性疼痛による中枢性感作への影響を評価した。また同被験者に採血を行い、全血DNAを用いたCOMT遺伝子多型の解析を行い、遺伝子多型のタイプにより疼痛VASや中枢性感作への影響が生じるかなどを統計的に解析することとした。 平成24年度は、研究協力施設の変更に伴い、一時的に研究が中断となったため平成25年度への研究の繰越申請を行った。平成25年度には、新たな研究協力施設を確保し、倫理申請を行った。それまでの研究実績から、遺伝子多型解析については研究協力を得られないことが比較的多かったことなどから遺伝子多型解析は行わず、熱刺激プロトコールと疼痛に関連した臨床データおよび疼痛に関する調査票との関連解析を実施することとした。 平成25年12月に新たな研究協力機関(川崎市立井田病院)での研究倫理申請を完了し、平成26年1月の症例からデータ収集を再開した。平成26年3月からデータの解析を開始し、現在、研究成果のとりまとめを実施している。
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