研究概要 |
癌幹細胞の存在は、1997年急性骨髄性白血病において初めて報告された(Nature Medicine, Vol.3, 1997, p.p.730-737)。癌幹細胞は、分化し癌組織を形作る多分化能と、細胞分裂を経ても多分化能を維持できる能力である自己複製能を併せ持つ細胞であり、癌細胞の供給源と考えられている(Nature, Vol.414, 2001, p.p.105-111.)。再発・治療抵抗性を示す症例の新たな治療標的の検索を行うには、癌幹細胞の性質を理解することが必須であると考えられるが、未だ癌幹細胞の形質と、癌幹細胞より分化派生した癌細胞の詳細な相違は未だ不明である。そこで本研究では、癌幹細胞の異常からみた、新規の癌治療標的の検索を行う事を目的とする。本研究では、癌幹細胞様細胞を作成、同定し網羅的なDNAメチル化の解析を行うと共に、癌幹細胞の異常からみた異常メチル化候補遺伝子の同定を行う。同定した異常メチル化候補遺伝子は機能解析を行い、口腔癌の新規の治療標的となり得るか機能解析を行う。さらに、臨床組織においてもその遺伝子の発現レベルを確認し、実際の臨床情報との相関を図る。網羅的なDNAメチル化の解析技術の進歩に伴い、癌細胞におけるエピジェネティクスな異常についても次第に明らかとなってきた。我々の解析結果から得られる候補遺伝子は新規の治療標的あるいは治療応答性に関わるバイオマーカーとなり得ることが期待され、他領域固形癌に比べて有効な治療標的の見つかっていない扁平上皮癌において重要なプロジェクトとなる。さらに同定された候補遺伝子は、癌幹細胞の異常を基盤として同定したと言う点で非常に新規性のあり発展性のあるプロジェクトである。
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