本研究では、テロメラーゼ作動性の癌特異的ウィルス製剤(テロメライシン&テロメスキャン)に放射線療法を併用した基礎研究に基づいて、ウィルスによる癌細胞融解だけでなく、生存した癌細胞に対しても口腔癌の増殖、浸潤転移を制御させる臨床応用を目指した新たな治療戦略の早期開発を目指す。平成22年度は、各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞およびヒト正常細胞などにおけるSV40配列の存在を特異的プライマーを用いたDNA-PCRで、またSV40 large T抗原発現を特異的抗体を用いたウエスタンブロット解析にて行った。また、各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞およびヒト正常細胞におけるテロメラーゼ活性を測定した。その結果ヒト口腔扁平上皮癌細胞において有意にテロメラーゼ活性を有していた。また、フローサイトメトリーを用いて、各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞および正常細胞におけるアデノウイルス受容体の発現を認めた。さらに各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞およびヒト正常細胞にテロメライシンを感染させ、E1A配列に対するプライマーを用いてリアルタイムDNA-PCRにてウイルス力価を測定した。つぎに各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞にテロメライシンを感染させた後、放射線を照射し、経時的な生細胞数の変化をXTTアッセイにて検討した。その結果、数種類のヒト口腔扁平上皮癌細胞においてウイルス単独投与と比較して、放射線照射を併用することによって、有意な殺細胞効果を認めた。
|