本研究では、申請者が口腔癌に対して行った分子標的治療薬のスクリーニングにて、有効性を見いだしたSTAT3阻害剤(JSI-124)についてのメカニズム解析を行い、基礎的な根拠を確立し、臨床応用を目指した新たな治療戦略の早期開発を目指す。平成22年度はin vitroにおける阻害剤(JSI-124)の口腔癌細胞へのSTAT3およびアポトーシス関連因子の発現変化の検討を行うとともに浸潤・転移能に対する影響について検討した。その結果、各種ヒト口腔癌細胞にJSI-124で処理後に、経時的な生細胞数の変化をXTTアッセイにて検討し、正常細胞との細胞障害活性に有意差を認めた。また、アポトーシス関連タンパクの発現解析を行った結果、アポトーシス関連タンパクの発現変化を認め、これらの変化によって細胞障害活性を認めた可能性が示唆された。平成23年度は口腔癌細胞の同所性リンパ節転移モデルを用いて、JSI-124を腫瘍内に投与し、抗腫瘍効果について、一定時間の後に高感度蛍光観察システムを用い、腫瘍塊の増殖抑制効果およびリンパ節転移への影響について解析した。その結果、同所性移植モデルでは有意な抗腫瘍効果の解析は認めなかったが、背部腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を認め、in vivoにおいても細胞障害活性を認めた可能性が示唆された。
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