〔目的]口唇裂・口蓋裂は、多因子病と考えられ、様々な視点から原因の研究が行われている。λsが5~10と考えられ、諸外国において家族集積性が指摘されていることから遺伝要因が強く関与している。また、動物実験では、いくつかの候補遺伝子が挙げられているが、ヒトを対象にそれらの遺伝子解析を行った際、変異が認められないこと、人種間で発症率に差があり、原因遺伝子が異なることなど、不明な点が多いのが現状である。我々は、口唇裂・口蓋裂の発症に関与する遺伝子を解明することを目的として、日本人、ベトナム人を対象に顎・顔面の発生に関与すると報告のある11遺伝子について変異解析、相関解析を行った。[方法]各施設の倫理委員会の承認を受け、十分なインフォームドコンセントに基づき同意を得た口唇裂・口蓋裂患者、その両親、対照健常者より採血、DNA抽出を行った。マウスの発現解析や変異マウスの解析によって発症に関与すると報告があるRYK(3q22)、EPHB2(1p36.1-35)、EPHB3(3q28-27)、DLX3(17q23)、TBX10(11q13.1)、ヒトの相関解析で陽性の報告があるTGF-B3(14q24)、変異の報告があるPAX9(14q12-q13)、CLPTM1(19q13.2)、PVRL1(11q23)、TBX22(Xq21.1)、8q24の計11遺伝子を対象に口唇裂・口蓋裂を単一遺伝子病とみなしての変異解析、多因子遺伝子病とみなしてのSNPを用いてcase-control study、TDT(伝達不平衡テスト)を行った。RYKでは、ミスセンス変異を認め、SNPのハプロタイプが日本人口唇裂・口蓋裂患者に有意な値を認めた。また、TGF-B3では、SNPとSNPのハプロタイプで日本人口唇裂・口蓋裂患者に有意な値を認めた。PAX9では、ミスセンス変異を認めた。以上より現時点でこの3つの遺伝子が口唇裂・口蓋裂の発症に関与にする結果が得られた。
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