研究概要 |
舌痛症は、舌に炎症や腫瘍などの器質的な変化が認められないにもかかわらず、舌に慢性的な痛みや痛覚過敏が生じる疾患である。女性に発症することが多く、痛む部位が移動する、食事中は痛みが緩和されるといった特徴があるが、原因はほとんどわかっていない。わが国においては約700万人の患者が存在すると考えられるが、舌に器質的な変化が認められず、血液検査等も正常値を示すことから、「気のせい」にされることが少なくなく、適切な診断と治療がされていないケースが非常に多い。舌痛症はBurning mouth syndromeと呼ばれているように、舌に焼かれたような灼熱感を呈することが多いことから、舌の侵害熱受容器のTRPV1がなんらかの変化おこしている可能性が非常に高い。そしてTRPV1の過敏化にはGDNFの一つであるArteminとその受容体であるGFRα3が重要であることが報告されている。本年度は舌へのzymosan投与による舌痛症モデルを作成し、舌の組織学的変化の解析を行った。深麻酔下ラットの舌にZymosan(30 mg/ml),TNBS(10mg/ml)を1時間塗布し経時的に舌への熱刺激に対する頭部逃避閾値を計測した。Zymosan塗布後7日目、TNBS塗布後1日目より熱刺激に対する逃避閾値が有意に低下したが、舌の組織学的変化は見られなかった。また、舌に発症する熱性痛覚過敏におけるArteminおよびtransient receptor potential vanilloid(TRPV)1の役割を解明するために、三叉神経節の舌投射GFRa3およびTRPV1陽性神経細胞の存在を免疫組織学的に確認した。
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