研究課題/領域番号 |
22792024
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
奥村 雅代 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (10362849)
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キーワード | 神経因性疼痛 / マイクログリア / 三叉神経 / 延髄 |
研究概要 |
神経損傷によって発症するアロディニアのメカニズム解明のため、三叉神経系を用いた神経因性疼痛モデルである「眼窩下神経結紮モデル」「眼窩下神経切断モデル」「下歯槽神経結紮モデル」「下歯槽神経切断モデル」の4種のモデルラットを作成し、それぞれモデルについて口髭部における機械刺激に対する逃避閾値を測定したところ、「眼窩下神経結紮モデル」のほとんどのラット、「下歯槽神経切断モデル」の半数ほどのラットにおいて閾値の低下が見られたが、それ以外では見られなかった。これらのラットの延髄部におけるマイクログリアを免疫染色にて観察すると、下歯槽神経の損傷では延髄後角の再背側に、眼窩下神経の損傷では延髄後角の外側の広範囲に活性化したマイクログリアの集団が見られた。これは切断でも結紮でも、末梢神経が損傷するとその延髄への投射領域でマイクログリアが活性化することを示唆している。さらに、マイクログリアの活性化がそのまま機械刺激に対する逃避閾値の低下に繋がるわけではないことも表している。 しかし今回の神経損傷によって活性化したマイクログリアは、延髄後角を中心として吻尾側方向のかなり広い範囲に分布している。確かに三叉神経から延髄への投射領域である三叉神経脊髄路核は吻尾側方向に広がるが、領域によって触覚、痛覚等、末梢から入力される感覚情報が異なることが知られており、それらと活性化マイクログリアの位置関係については今後の詳細な検討が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4種も神経因性疼痛モデルラットの比較という点においては順調に進行している。しかし、方法がきちんと確立できなかった種類の行動テストについては、研究の進行を優先するために断念したものがあり、今後の進捗状況によっては再検証したい。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに4種も神経因性疼痛モデルラットの延髄におけるマイクログリアの活性化は確認できているが、今後はそれらマイクログリアの細胞内部のシグナル分子の動態まで詳細に比較する必要がある。さらに、アストロサイトの状態にいても検討出来ればと考えている。 また、予想よりも広範囲に及んだ活性化マイクログリアの分布と、三叉神経領域の触覚、痛覚、掻痒覚の延髄への投射領域との比較を行うことで、神経損傷、マイクログリアの活性化、感覚異常の発症という3つの事象の関連について新たな知見が得られるものと期待している。
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