本研究の目的は、歯科矯正治療後の歯槽骨退縮や、社会の急速な高齢化に伴って以後急増すると考えられる骨関連疾患に対し、非コラーゲン性象牙質マトリクスタンパク(ペプチド)を応用し、新たな観点から骨欠損等に対する骨組織再生と修復反応を促進させる方法を確立することである。特に象牙質に多く発現しているマトリクスタンパク質:DSPP(象牙質シアロリン酸化タンパク)に着目し、DSPPが骨の細胞分化・骨代謝においてどのような役割を果たすのかを、骨髄由来間葉系幹細胞やDSPPノックアウト(KO)マウス由来骨芽細胞などを用いて同定し、DSPPの歯以外での生物学的役割を発見すると共に総合的な理解を行うのを目的とする。本研究結果から、新規骨形成促進ペプチド、歯周病治療薬、あるいは修復象牙質形成促進剤の開発など、歯科臨床への貢献につながる新規医薬開発の基礎データを得ることを最終的なゴールとする。 本年度は、DSPPノックアウト(KO)の供与を受け、まず解析に十分な数の異なる遺伝子型を持つ野生型マウス(WT)、ホモ接合体マウス(KO)を得ることができた。そこで、研究計画に従いまずDSPPの骨吸収に対する影響を調べた。はじめにDSPP WT・KOマウス切歯象牙質ディスク片を96well培養プレート内に静置後、単球マクロファージ系細胞を播種、象牙質ディスク上の吸収窩の面積を計測することで、DSPPの骨吸収への影響を調べた。しかし有意な差はみられなかったので、現在DSPP WT・KO由来頭蓋冠の器官培養を行い、器官培養系での破骨細胞形成数また吸収面積の差を評価中である。今後は間葉系細胞分化能への影響の検討合成DSPPを用いた間葉系細胞のシグナル伝達解析を行う予定である。
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