研究課題/領域番号 |
22792040
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
春山 直人 東京医科歯科大学, 歯と骨のGCOE拠点, GCOE拠点形成特任教員 (70359529)
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キーワード | 歯学 / 細胞外マトリクス / 象牙質シアロリン酸化タンパク / 骨代謝 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、歯科矯正治療後の歯槽骨退縮や、社会の急速な高齢化に伴って以後急増すると考えられる骨関連疾患に対し、非コラーゲン性象牙質マトリクスタンパク(ペプチド)を応用し、新たな観点から骨欠損等に対する骨組織再生と修復反応を促進させる方法を確立することである。特に象牙質に多く発現しているマトリクスタンパク質:DSPP(象牙質シアロリン酸化タンパク)に着目し、DSPPが骨の細胞分化・骨代謝においてどのような役割を果たすのかを、骨髄由来間葉系幹細胞やDSPPノックアウト(KO)マウス由来骨芽細胞などを用いて同定し、DSPPの歯以外での生物学的役割を発見すると共に総合的な理解を行うのを目的とする。 本年度は、まずDspp WT・KO由来頭蓋冠の器官培養を行い、遺伝子型の違いによる破骨細胞形成数の差をTRAP染色にて評価した。その結果、Dspp KOマウス由来頭蓋冠に見られた破骨細胞数はDspp WT由来のものより有意に少なかった。次に、WT・KOマウス頭蓋冠より間葉系細胞を採取後、骨細胞、脂肪細胞の分化促進培地内での培養を行い、遺伝子型による骨細胞、脂肪細胞への分化の違いをそれぞれALP活性や脂肪染色によって確認した。その結果、DSPP KO由来間葉系細胞のほうがWT由来細胞よりも脂肪細胞を形成した数が有意に多かった。骨細胞への分化能の違いは現在も検討中である。 加えて、各週齢のDSPP WT・KOマウスの骨の表現型について、マイクロCTを用いたX線学的計測を行うため試料採取を行った。 また、DSPPの部分的配列を有する合成ペプチドを用い、効果的に細胞分化を制御するDSPP配列の検索を、上記WT・KOマウス頭蓋冠由来間葉系細胞を用いて実行し、データ解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は骨や脂肪細胞への分化段階に応じて特異的に発現するとされる指標遺伝子の培養細胞における発現レベル解析や、マウスサンプルのマイクロCTによる解析、骨形態計測解析も行う予定であったが、現在も解析中で確定的データを得るに至っていない。ただし、来年度予定していたペプチドを用いた実験を前倒しで行なっている。よって全体としては概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり、実験の実施計画において前後している部分があるが、全体としては申請書に記載した研究目的を達成できると考えられる。今後は、まず今年度未完了である培養細胞における遺伝子発現レベル解析や、マウス骨サンプルのマイクロCTによる解析、骨形態計測解析を継続すると共に、平成24年度に予定していた合成DSPPを用いた間葉系細胞のシグナル伝達解析、ペプチドを用いた骨形成、骨吸収のin vitro,in vivoにおける解析を行い、最終的には、新規骨形成促進ペプチド、歯周病治療薬あるいは修復象牙質形成促進剤の開発など、歯科臨床への貢献につながる新規医薬開発の基礎データを得て行きたい。
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