研究概要 |
<研究の目的> 我々は歯周組織形成に関わる細胞群が、水分子チャネルの一つであるアクアポリン1(AQP1)を特異的に発現していることを明らかにし、AQP1陽性細胞がセメント質、固有歯槽骨の形成に関与することを明らかにした。また近年、AQP1は細胞の形態変化、移動に関与することが報告され、単なる水輸送にとどまらない細胞に普遍的な役割が報告されている。 本研究の目的は我々が同定した新規歯周組織形成細胞マーカーであるAQP1を指標にして、咬合性外傷や歯の矯正移動およびアンキローシス等の実験的病態下からの再生過程における歯周組織形成細胞の動態を追求し、歯周組織再生過程の特異性を明らかにすることである。 <結果> 今年度は、実験的咬合性外傷モデルを用いて、咬合性外傷時におけるセメント芽細胞の動態および歯根膜細胞におけるAQP1陽性細胞の発現変化について明らかにした。 実験的咬合性外傷モデルにおける歯周組織の組織学的変化をAQP1を指標にして歯周組織細胞における発現の変化、および,陽性細胞の細胞動態について観察した。咬合挙上1日後に、歯根膜の一部にAQP1陽性細胞を認めたことから、外傷刺激により歯根膜細胞の運動性が上がりAQP1免疫活性が上昇した可能性が示唆された。また、咬合挙上3日で硝子様変性が出現し、硝子様変を取り囲むようにAQP1陽性線維芽細胞が密集していたことは、AQP1陽性線維芽細胞が変性物質の処理に何らかの関与をしている可能性が示唆された。また、咬合挙上14日では硝子様変性像が消失し歯根膜幅が回復したにもかかわらず、歯根膜全体にAQP1陽性細胞が存在したことは、歯根膜線維の再生にAQP1陽性歯根膜線維芽細胞が関与している可能性が示唆された。
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