〈研究の具体的内容〉オートファジーは、リソソームを分解の場とする細胞内タンパク分解機構であり、すべての真核生物に保存されている普遍的な生命現象である。本研究では、鼻口蓋管の形成、上皮の分化におけるオートファジーの役割を組織学的、分子生物学的に解明することを目的とし、実験を行っている。H22年度は、鼻口蓋管の形態およびオートファジーの発現の解析を組織学的に解明することを計画し、実験を行った。ICRマウス胎生15日齢~マウス生後6日齢、10日齢、20日齢の頭部をパラフィンで固定し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、鼻口蓋管部の組織学的な変化を確認した。 また、オートファジーの発現を蛍光で確認可能なGFP-LC3マウスを用い、コンフォーカル顕微鏡下で直接胎生17日目の組織を観察したところ、口蓋にはほとんどオートファジーの発現を認めず、鼻口蓋管部のみに強い発光を認めた。それを受け、同様に組織切片にて確認したところ、前頭断の組織切片でも鼻口蓋管部のみに強い発光を認めた。オートファジーの機能をノックアウトしたAtg5-/-マウスでは、鼻口蓋管の上皮接着因子に変化が認められ、オートファジーと上皮接着因子との関連が示唆された。 〈研究の意義・重要性〉鼻口蓋管は生体において特に役割を担っているわけではないため、鼻口蓋管の組織学的解明はほとんど進んでおらず、論文などでもほとんど報告はなされていない。ところが、鼻口蓋管の組織は出生前後で様相が変化し、口蓋や鼻粘膜とは別の特異的な分化を遂げている可能性がある。さらに同部の上皮接着因子とオートファジーの関連を明らかにすることで、鼻口蓋管の分化およびオートファジーとの関係性、ならびにオートファジーと上皮接着因子の関連を明らかにすることは、非常に有意義と考えられる。
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