生体は、常に外界から様々なメカニカルストレスを受けている。特に骨組織は、メカニカルストレスに応答して骨量の維持および再構築がたえず行われている。そしてその代謝調節は、骨表面に存在する骨芽細胞と破骨細胞および骨深部に存在する骨細胞の協調的かつ連鎖的な情報伝達により起こると考えられている。しかし、周囲を堅い骨基質に覆われている細胞の特性上、骨組織中での動態の解明は国内外で未だ実現に至っていない。研究者らは本研究で生きた骨組織を用い、その中に存在する骨系細胞によって営まれるメカニカルストレスへの応答をリアルタイムで解析し、さらに応答細胞がどのように周囲の細胞へ情報を伝えているのかを解明することを目的としている。これまでの研究結果から、1.本実験系における機械的刺激は骨表層に負荷される事が示唆された。2.定常状態で骨芽細胞および骨細胞にカルシウムオシレーションを認めた。機械的刺激を負荷した場合の細胞の反応率は、骨芽細胞および骨細胞とも有意に上昇した。また反応群におけるオシレーションの頻度や高さは、骨芽細胞は機械的刺激によって有意に上昇したが、骨細胞では変化を認めなかった。3.ギャップ結合を阻害した結果、骨芽細胞の細胞応答は変化を認めなかったが、骨細胞はその反応率において有意に減少した。以上の研究成果は、IADR (Internatiaonal Association of Dental Research)、日本骨代謝学会、日本矯正歯科学会、歯科基礎医学会等の国内外の学会で発表を行い、IADR Hatton Award、日本矯正歯科学会優秀発表賞をそれぞれ受賞した。現在研究結果をまとめており、国際誌に論文投稿する予定である。
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