筋線維の壊死を主病変とする進行性の遺伝性筋疾患である筋ジストロフィーは予後がきわめて悪く、効果的な治療法の開発が待たれている。本研究は、筋ジストロフィーモデルマウスにマイオスタチン特異的siRNAを投与し、RNA干渉(RNA interference)による骨格筋量制御法の有効性を確立することを目的としている。昨年度の研究より筋ジストロフィーモデルであるmdxマウスでは骨格筋の正常な発育が阻害されていることが明らかとなった。そこで本年度は、mdxマウスにsiRNAを導入しRNA干渉によるマイオスタチン遺伝子の抑制効果の検討を行った。 実験には25週齢の筋ジストロフィーモデルマウス(mdxマウス)10匹を使用した。右側咬筋にマイオスタチン特異的二本鎖siRNAとアテロコラーゲン複合体の局所投与を行い、2週間後に咬筋を摘出し、解剖学的解析を行った。また、咬筋の活動量の変化を検討するため、siRNAの投与前後にマウス咬筋の終日筋活動測定を行った。筋活動測定にはテレメトリー長時間自動計測システムを使用した。 siRNAの局所投与を行った側の咬筋は肥大し、対照側と比較して筋重量が有意に増加した(p<0.05)。筋線維についても対照群と比較して有意に肥大しており(p<0.01)、対照側でみられる筋線維の大小不同や脂肪組織は認めなかった。投与前と投与珍週間後の咬筋終日筋活動を比較すると、低い活動レベルで投与後筋活動量が有意に増大していた(p<0.05)。 以上より、RNA干渉を用いたマイオスタチン遺伝子抑制は、筋ジストロフィーモデルマウスの骨格筋萎縮を形態的、機能的に改善し得ることが明らかとなった。
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