研究概要 |
脳性麻痺などの原因疾患により摂食・嚥下障害を有する児童は誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高い。これらの肢体不自由児は食形態や摂取方法が健常児と異なっており、そのため口腔細菌叢も異なると考えられる。誤嚥性肺炎を予防するということで口腔ケアに対する関心は近年高まってきたが、しかし口腔ケアの現場と細菌学的知識が完全にリンクしていないのが現状である。したがって口腔ケアの現場と協力して起炎菌を分離採取し、分類学的解析を行うことは医科でも歯科でもほとんど行われておらず、さらに宿主の口腔細菌叢を解析した報告は殆どないことから本研究は独創的であり、これを特徴とする。細菌感染性の誤嚥性肺炎の起炎菌を現在の新しい手法に基づいた系統分類により再分類し、臨床の現場にフィードバックしていくことは非常に重要なことであり、誤嚥性肺炎の治療や予防、口腔ケアに役立つと考えられる。 本年度も、誤嚥性肺炎を起こした患児の唾液サンプルの採取と健常小児の唾液サンプルの採取を行い、口腔細菌叢の解析を継続して行った。また、簡易キットを使用して誤嚥性肺炎を起こした患児と健常小児の口腔細菌の総レンサ球菌数、ミュータンスレンサ球菌数、乳酸桿菌数について、実際の培養法での結果と比較を行った。 さらに歯周病総細菌数、A.actinomycetemcomitans菌数、P.gingivalis菌数、P.intemedia菌数、T.forsythia菌数、口腔日和見感染菌(MRSA,MSSA,緑膿菌、β溶連菌、肺炎球菌、H.influenzae、K.pneumoniae、S.marcescens、M(B.)catarrhalis、カンジダ)の感染の有無について簡易キットを使用して検出を行った。 その結果の一部を平成24年度の日本小児歯科学会で発表を行う予定である。
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