脳性麻痺などの原因疾患により摂食・嚥下障害を有する児童は誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高い。これらの肢体不自由児は食形態や摂取方法が健常児童と異なっており、口腔細菌叢も異なると考えられる。細菌感染性の誤嚥性肺炎の起炎菌を現在の新しい手法に基づいた系統分類により再分類し、臨床の現場にフィードバックしていくことは非常に重要なことであり、誤嚥性肺炎の治療や予防、口腔ケアに役立つものになると考えられる。 長崎大学病院小児歯科室を受診した摂食嚥下障害を有する患者30名(0歳6か月~31歳、女性13名、男性17名)の唾液を採取し、口腔内細菌叢を解析した。患者らの原疾患の内訳は、脳性まひ13名、精神発達遅滞、精神運動発達遅滞9名、てんかん12名、脳症後遺症5名(重複含む)であった。誤嚥の既往が認められたのは11名で、そのうち6名には気管切開、3名には気管喉頭分離が施されていた。栄養摂取では、胃瘻が施されてるのは10名、経管栄養は5名、経口摂取が可能なのは15名だった。 日和見感染菌である緑膿菌が12名、MRSAが2名、β溶レン菌が1名、肺炎桿菌1名、セラチア菌が3名、カンジダが3名から検出された。日和見感染菌が検出されなかったのは、14名、1種類のみ12名、複数検出されたのは4名であった。気管切開が施されている6名の患者では、すべて緑膿菌が検出された。 胃瘻で栄養摂取している患者の7名と、経管栄養の4名からは緑膿菌が検出された。 これらのことから気管切開を行っている患児または経管栄養、胃瘻の患児と緑膿菌の感染には関連がある可能性が示唆された。 この結果は2013年6月に韓国で開催されるThe 24th IAPDで発表予定である。
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