小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療には、現在、アデノイド口蓋扁桃除去が第一選択とされるが、その治療の有効性は70%程度と報告されている。一方、上顎骨急速拡大の有効性を示唆する報告があるものの、十分なエビデンスが得られているとは言えない。これらの理由として、原因となる気道の閉塞部位の特定方法が確立されていないために、適切な治療方法が選択されていない可能性が考えられる。 そこで、本研究は上気道流体シミュレーションを用いた通気障害部位の特定方法とその診断に基づいた歯科的対応法の確立を目的に、咬合治療を目的に撮影された小児のコーンビームエックス線CTデータ(CTデータ)を用いて、(1)上気道流体シミュレーションを行い、小児OSASの通気障害部位の特定方法としての有効性を確立する。(2)上顎骨側方急速拡大、下顎前方誘導を行った治療前後の気道形態を解析し、治療後の予測モデルを作製する。(3)上気道流体シミュレーションを用いて、予測モデルと実際の治療後のデータの結果を比較検討して、精度の高いものにすることを目的に研究を行った。 該当年度において、本シミュレーションを用いて小児OSASの通気障害部位の特定方法としての有効性を示すデータを得ることができた。また、上顎骨側方急速拡大ならびに下顎前方誘導を行った治療前後の気道形態を解析を行い、これらの治療を行った場合の治療予測モデル作製のための基礎データを得ることができた。その結果、精度の高い治療予測モデル作製が可能となり、治療成績向上に結び付く有効な研究ができた。
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