本研究は3年間の研究期間で、咬合治療を目的に撮影された小児のコーンビームエックス線CTデータ(CTデータ)を用いて、①上気道流体シミュレーションを行い、小児OSASの通気障害部位の特定方法としての有効性を確立する。②上顎骨側方急速拡大、下顎前方誘導を行った治療前後の気道形態を解析し、治療後の予測モデルを作製する。③上気道流体シミュレーションを用いて、予測モデルと実際の治療後のデータの結果を比較検討して、精度の高いものにすることを目的に行った。 その結果、①上気道流体シミュレーションは上気道通気障害の有無と障害部位の特定に有効であることが示された。②上顎急速拡大がこれまで考えられてきた以上に、鼻腔通気状態の改善に有効であることが示唆された。③鼻閉により、咽頭部の吸気時の陰圧が強くなり、気道収縮を起こしやすくなること、RMEにより鼻腔通気状態を改善することで吸気時の咽頭部の陰圧は軽減し、気道収縮が起きにくくなる可能性が示された。この結果はRMEの小児OSASに対する作用機序の一要因として考えられるだけでなく、咽頭部に通気障害を認めても、原因は鼻腔にある可能性を示し、上気道全体の通気状態評価の有用性が示された。
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