研究課題
歯根膜組織より精製したtotal RNAを用いて、DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果ヒト歯根膜組織では、歯根や骨吸収に関与すると考えられているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9の高い発現が認められた。その他の硬組織吸収因子として、MMP-19や-11の発現も見られた。さらに、骨代謝系に関与すると思われる因子として、ビタミンD受容体(VDR)、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)、BMP-6、Runx2などの発現が見られた。細胞外マトリックス類では、オステオポンチン(OPN)、オステオネクチン(ONC)、コラーゲンα1(I)、コラーゲンα1(III)などの発現が見られた。以上の様に歯根膜は骨代謝、歯根代謝に影響を及ぼす因子を多く発現しており、バランスを取りながら、骨形成や骨吸収、歯根吸収を制御しているものと推察された。次に歯根膜組織と同様に、ヒト歯根膜組織より分離した培養ヒト歯根膜繊維芽細胞からtotal RNAを精製し、DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、上に示したような歯根膜組織で見られた因子は、発現が著しく低下していた。このことは、歯根膜細胞が歯周組織から分離され、細胞単体になるとその性質を失うことを示している。従って、歯根膜細胞は歯周組織中に存在し、いろいろな細胞などと相互作用することで、歯周組織自身やその他の歯周組織の恒常性を維持していることを示すものであると推察された。
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北海道医療大学歯学雑誌
巻: Vol.29,NO.1 ページ: 91-99