研究課題/領域番号 |
22792065
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
岡山 三紀 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (30382500)
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キーワード | 歯の移動 / 歯根吸収 / メカニカルストレス / 骨関連遺伝子 / ヒト歯根膜 / DNAチップ |
研究概要 |
平成22年度DNAマイクロアレイおよびRT」PCR解析の結果より、ヒト歯根膜組織では、歯根や骨吸収に関与すると考えられているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9、MMP-19や-11の発現も見られた。さらに、骨代謝系に関与すると思われる因子として、ビタミンD受容体(VDR)、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)、BMP-6、Runx2、細胞外マトリックス類では、オステオポンチン(OPN)、オステオネクチン(ONC)、コラーゲンα1(I)、コラーゲンα1(III)などの発現が見られた。 この予備実験結果より、ヒト培養歯根膜細胞に独自開発した超低速遠心機にてメカニカルストレスである重力負荷を加えた。第二世代の脂質メディエーターとして注目されているリゾホスファチジン酸(LPA)や合成に関わる酵素遺伝子分群の発現をRT-PCR法により解析した。また、LPA添加および重力負荷し、誘導される遺伝子群をDNAマイクロアレイおよびRT-PCR解析により比較検討を行った。 結果、ヒト培養歯根膜細胞において、LPA1およびLPA6の強い発現が認められた。LPA合成酵素ではLyso-PLDの発現がみられたがPA-PLAla(LIPH)の発現は認められなかった。LPA添加およびメカニカルストレスによって、NR4A3(核受容体)とRGS2(G蛋白質シグナル)などの強い発現上昇がみられた。よって、ヒト培養歯根膜細胞において、LPA受容体および合成酵素が強く発現しており、LPA刺激やメカニカルストレスに対して遺伝子発現などの応答もあることから、圧迫側歯根膜に関連する遺伝子発現を制御していると考えられた。したがって、LPAシグナルは圧迫側歯周組織の改造をコントロールする役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞培養実験で使用していたCO2インキュベーターが不具合のため、器材選定、購入手続のため歯根膜細胞培養・実験が一時的に遅れた。新規器材購入後は、実験を再開しおおむね順調に実験は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
・DNAマイクロアレイの結果をRT-PCR解析により、再度遺伝子発現確認を行う。 ・再現性が確認された後に、歯根吸収機能に関与がみられる遺伝子郡に対し、siRNAを設計し合成する。siRNAを歯根膜に導入し、因子のノックダウンを行い、機能しているか確認を行う。 ・遺伝子導入した歯根膜細胞と破骨細胞を共存培養させ、メカニカルストレスを負荷し破骨細胞の分化および活性を測定する。吸収効果の有効性が確かめられた遺伝子を歯根吸収遺伝子として同定する。 ・同定された歯根吸収遺伝子のcDNAを歯根膜等より単離し、発現ベクターを構築する。
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