研究概要 |
口蓋裂発症メカニズムを解明すると同時に、軟口蓋裂治療における組織再生や組織工学的手法を加えた新たなアプローチの開発を視野にいれて、研究を計画・解析を行ってきた。胎生15日齢のマウスから口蓋組織を採取し、硬口蓋予定、軟口蓋予定領域とでマイクロアレイ解析を施行、それらを比較することで軟口蓋発生時に特徴的に現れる遺伝子を抽出した。軟口蓋での発現が高かった遺伝子のうち、細胞外基質蛋白に焦点をしぼり、Type I collagen,Periostinの2つの蛋白を抽出。それらの発現局在を免疫組織化学染色法にて経時的に観察した。 Periostinは、軟口蓋間葉に広く、強く発現すること、Type I collagenと共に、口蓋腱膜に発現することが明らかとなり、さらに、口蓋腱膜を境として、Type I collagenは鼻腔側に発現が強く、Periostinは、口腔側で発現が強いという特徴をもっていることがわかった。これは、両者が単独で発現していることと、共発現している場合での組織の機能に違いがあるということを示唆していると考えられた。 TGF-betaシグナルは、顔面発生において重要な役割を担っており、受容体の上皮、または神経堤細胞でのコンディショナルノックアウトマウスは、口蓋裂を発症する。そこでリガンドであるTGF-beta2と3について、口蓋発生時期での免疫組織化学染色を行ったところ、Type I collagen,Periostinと同じく、軟口蓋・口蓋腱膜に強い発現を示した。また、器官培養を用いて外因性にTGF-beta作用させると、口蓋間葉にType I collagen,Periostin発現が促進され、TGF-betaは、Type I collagen,Periostinを共に発現させる働きがあることがわかった。 以上、軟口蓋発生を特徴づけるType I collagen,PeriostinそしてTGF-betaの3つの因子についてその相互作用を考察し、J Histochem Cytochem. 2012 Jan;60(1):57-68に報告した。
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