1、申請者が考案した歯周組織再生療法の検討のため、本年度の研究の目的は、ハニカム構造の歯周組織再生への有効性、およびbFGFの歯周組織再生へ有効性についてそれぞれ検索を行った。 2、研究の方法と結果 (1)ビーグル犬4頭の下顎小臼歯の分岐部に高さ4mmでLindhe分類III級の骨欠損モデルを作成して、口径300μmのトンネルパイプ型βTCPを移植した。なお比較として気孔性に優れたβTCP(オスフェリオン)、気孔構造のないβTCPを移植した。さらに移植を行わなかった対照群と計4群を設定した。移植後8週での治癒状態を病理組織学的に検索した。トンネルパイプ型βTCPを移植した場合、欠損部の歯冠側にも新生骨の形成が認められ、統計学的にも有為に上皮の侵入が少なかった。他の2群では、骨形成が、移植材の周囲に限局しており、歯冠側では上皮の侵入が認められた。気孔構造を有すβTCPは気孔内部に骨形成を認めるが、移植材周囲の骨形成は気孔構造のないβTCPと同様であった。この結果から、ランダムトンネル構造を有するβTCPは、術後初期に血管と硬組織形成を誘導する特徴を有することが示された。 (2)ビーグル犬2頭の下顎小臼歯の分岐部に高さ4mmでLindhe分類III級の骨欠損モデルを作成した。24%EDTA(2分)処理後に、bFGFを塗布した群と塗布を行わない対照群を設定した。外科処置後8週での治癒状態を病理組織学的に検索した。bFGFを塗布した群は近遠心の根面にそって骨形成と歯根膜の再生が認められた。骨性癒着や根吸収は僅かであった。分岐部中央では骨形成が少なく陥凹しており、分岐部内への上皮の侵入が認められた。この結果から、bFGFの塗布法は、根分岐部欠損(Lindheの分類III度)で歯周組織を再生するが、広範囲の欠損部には担体が必要であることが示唆された。
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