セメント質は歯根と歯周組織の付着に重要な役割を果たすことから、セメント芽細胞は歯周組織再生において重要な役割を担っていると考えられる。以前、我々は細胞外Ca^<2+>刺激によりプロテインキナーゼA依存的にセメント芽細胞のFibroblast growth factor (FGF)-2 mRNAおよびタンパク発現が誘導されることを報告した。一方、プロテインキナーゼC活性化物質であるPhorbol 12-myristate 13-acetate (PMA)は、Erk1/2およびp-38 MAPキナーゼを介して細胞の増殖促進やアポトーシス抑制に関与するが、我々はセメント芽細胞をPMAで刺激することでやはりFGF-2mRNAの発現が増強されることを見いだした。そこで、本研究では、セメント芽細胞の機能調節に対するPMAの関与の機構についてプロテインキナーゼを介したシグナル伝達経路に着目して検討した。 1.OCCM-30をPMAで刺激したところ、10nM濃度および刺激後6時間をピークとしてFGF-2mRNAの強い発現誘導がみられた。さらに12時間をピークとしてFGF-2タンパクの発現増強がみられた。 2.PMAによるFGF-2mRNAの発現誘導は、プロテインキナーゼC阻害剤であるGF-109203Xを存在させることによってほぼ完全に抑制された。 3.プロテインキナーゼA阻害剤であるH-89およびアデニル酸シクラーゼ阻害剤であるMDL-12330Aでは、PMAによるFGF-2mRNAの発現誘導の抑制がみられなかった。 4.PMAによるFGF-2mRNAの発現誘導はL型Ca2+チャネル拮抗薬であるnifedipineの前処理によっては抑制されなかった。 5.PMAによるFGF-2mRNAの発現誘導はMAPキナーゼErkおよびp38の阻害剤であるPD98059およびSB203580前処理で抑制されたのに対し、JNK阻害剤であるSP600125では抑制されなかった。
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