研究概要 |
本年度は、歯周組織構成細胞によるTGFbeta産生に関する研究を行った。歯周炎は、局所の破骨細胞活性化により疾患が進行する。破骨細胞の活性化には様々な経路があり、歯周炎が多因子疾患であることが原因でもある。現在までに報告の多い細菌性刺激因子として、(TLR2のリガンドとして、P.gingivalis LPS,TLR4のリガンドとしてA.actinomycetemcomitans LPS,TLR9のリガンドとしてCpG)に加え、炎症誘導物質であるHMGB1や、神経伝達物質であるAnandamideを刺激因子として研究を行った。単球系細胞であるTHP-1をこれらの因子にて刺激し、TGFbeta産生量を検討したところ、細菌性刺激因子だけではなく、神経伝達物質による刺激によっても、TGFbetaが産生されることが明らかとなった。また、このTGFbeta産生は、CB2レセプター及びTRPV1レセプターを介した経路により産生されていた。そして、単球系細胞を神経伝達物質で刺激し、様々なサイトカイン産生量を測定したところ、TGFbetaだけではなくIL-6産生も増強されていた。以上のことから、神経伝達物質は、歯周炎局所において、圧痛の伝達コントロールだけではなく、炎症免疫機序にも影響を与えている可能性が示唆された。細菌性因子だけではなく、神経伝達物質により破壊が進行する機序に関して、引き続き考察を深めていく必要がある。
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