研究概要 |
本年度は、侵襲性歯周炎患者におけるIL-17産生に関する研究を行った。IL-17に関しては、侵襲性歯周炎患者血清中の濃度が上昇することが知られており、組織破壊との関連性が報告されている。本実験では、IL-17ファミリーの中で、IL-17A,IL-17F,そしてIL-17A/Fの3種の血清濃度を調べる目的で、侵襲性歯周炎患者66名の初診時に血液を採取し、血清を保存した。また、健常者の血清を比較対照として用いた。血清中のIL-17A,IL-17F,IL-17AFの濃度をELISA法にて測定した。その結果、IL-17AF,IL-17F,IL-17A量の平均は、健常者に比べて、侵襲性歯周炎患者で低い値を示した。特にIL-17Fは、健常者や慢性歯周炎患者に比べて、侵襲性歯周炎患者で、低い値を示した。しかしながら、侵襲性歯周炎患者においてIL-17F量の高い値を示した患者が5名いた。そして、この患者は、いずれも限局性の侵襲性歯周炎であり、骨吸収はあまり進んでいなかった。IL-17FはT細胞だけでなく、自然免疫細胞や上皮細胞からも産生され、炎症応答を伴わずに自然免疫を活性化させ、細菌防御能を高めることができる。このIL-17Fの産生が、組織破壊の進行を遅らせ、破壊を限局的にしている可能性が考えられる。また、IL-17Fの低産生が侵襲性歯周炎発症へ影響を与えている可能性も示唆された。
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