研究概要 |
本研究は,申請者が継続的に検討を続けてきた低濃度LPS感染よるマクロファージ-脂肪細胞相互作用に伴う過剰炎症反応を,抗炎症作用を有する薬剤が抑制し,結果として血管病変やインスリン抵抗性が改善するとの仮説を設け検証しようとするものである。本年度は,昨年度に引き続き歯周病などの局所の炎症が全身に影響を及ぼすほどに増幅される機序をふまえ,抗炎症作用を有するフラボノイド(エピカテキン)を用いる際の有効性を機序の面から明らかにすることを目的とし,以下のとおり研究を実施した。 "in vitro研究" 1.脂肪細胞とマクロファージの共培養を行った。 2.マイクロアレイ法:昨年度実施したマイクロアレイ法で得た結果をもとに脂肪細胞における発現遺伝子をエピカテキン処理群と未処理群とを比較し,パスウェイ解析を行った。その結果,エピカテキン処理群で炎症性サイトカインやケモカインの遺伝子発現抑制があった。 3.変動のあった分子の遺伝子およびタンパク発現量の確認:リアルタイムPCR法,ELISA法,ウェスタンブロット法にて確認を行ったところ,マイクロアレイ法のスクリーニングで得られた結果と同様の結果が得られた。つまり,フラボノイド添加によってRANTESやIL-6に代表される炎症性サイトカインやケモカインの抑制が遺伝子レベル、一部のサイトカインではタンパクレベルで確認出来た。また転写因子の解析からその作用点は,NF-κBであることが判明した。エピカテキンは細菌感染による脂肪細胞-マクロファージ相互作用系における炎症反応の増幅を抑制することで,インスリン抵抗性や心血管イベントリスクを低下させる可能性が示唆された。
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