妊婦の歯周病は早産発症のリスクファクターとなる可能性が指摘されている。しかしながら、早産には多様な因子が関与し、また、本邦においては妊婦の歯周病に関する研究自体が少なく、まだ一定の見解には至っていない。本研究では、日本における妊婦の歯周病の発症率ならびにその全身の炎症状態との関連、および歯周病罹患状態が早産のリスクファクターとなり得るかを前向きコホート研究にて調査した。 昭和大学病院産婦人科で分娩を予定して健診を受けている妊婦のうち、本研究の協力に書面で同意した165名(初産婦92名、経産婦73名)を対象とし、妊娠初期に歯周病検査、血清サイトカイン(IL-6)の測定を行った。その後、歯周病検査結果と今回の妊娠経過との関連を前方視的に調査した。本研究は当院倫理委員会の承認の下で行われた。その結果、1)分娩終了した妊婦102名(初産婦58名、経産婦44名)の内、歯周病陽性例が77例(75.5%)であった。2)IL-6が測定可能であった78名の内、歯周病陽性例(54例)のIL-6は2.0±4.7pg/mlで、陰性例(24例)の1.2±0.4pg/mlと比較し高い傾向を示した。3)現在までに早産となった症例は7例で、そのすべてが歯周病陽性例であった。今回の結果より、日本での妊婦の歯周病有病率は75.5%であった。歯周病は局所の炎症のみならず、血清のIL-6を上昇させるなど全身の炎症反応と因果関係が存在し、それが早産発症に関与している可能性が示唆された。
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