研究概要 |
歯周病が早産・低体重児出産のリスクファクターとなるかについては、諸外国でさまざまな調査が行われているが、未だ定まった見解は得られていない。一方、日本では妊婦の歯周病に関する研究自体が少なく、妊婦の歯周病罹患状態には不明な点が多い。本研究の目的は、日本在住妊婦の歯周病罹患状態が早産のリスクファクターとなり得るか前向きコホート研究にて調査することである。 当大学病院産婦人科で分娩を予定して健診を受けている日本在住妊婦(外国人2名含)のうち、本研究の協力に書面で同意して2009年6月から2011年12月までに分娩終了した187名(初産婦107名、経産婦80名)を対象とし、妊娠初期に歯周病検査、妊娠経過との関連を調査した。なお、本研究は所属機関の医の倫理委員会の承認の下で行われた。 その結果、歯周病群は初産婦81名(75.7%)、経産婦58名(72.5%)だった。また、早産は初産婦3名、経産婦7名の10名(5%)であり、その全てが歯周病群であった。妊娠期間や出生時体重、年齢と各種歯周病マーカーとの関連を調べた結果、初産では平均Plaque Index (PlI) vs妊娠期間、総歯数 vs IL-6、経産婦では年齢vs出生体重、プロービング深さ4mm以上の歯面の割合vs妊娠期間、IL-6 vs年齢、TNF-α vs妊娠期間、平均Gingival Index (GI) vs妊娠期間、Bleeding on probing(+)率vs妊娠期間において有意な相関がみられた。 歯周病は,早産に寄与する可能性が示唆された。今後,被験者数を増やし,各因子の相対リスクの検討も行う必要がある。
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