研究概要 |
マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシンを併用して全顎のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行う歯周薬物療法を施術することにより、早期に患者の歯肉の炎症や腫脹が改善され、顕著な歯周ポケットの減少が引き起こされるという報告が散見されるが、その治癒のメカニズムについては詳細が不明であるため、アジスロマイシンの歯周組織における影響を分子生物学的手法で検索する実験を行った。 第一にin vitroにおけるさらに安定した炎症実験モデルを確立するために、ヒト歯肉線維芽細胞に対してLPSによる刺激を行って炎症を惹起させる実験系が毎回同じ条件となるようにテストし、炎症実験モデルを確立した。その後、起炎状態となったヒト歯肉線維芽細胞にアジスロマイシン(AZM)を添加し、細胞増殖能を測定した。また、AZMによる刺激後、経時的にトータルRNAを抽出してRT-PCRを行い、炎症に関連し食細胞の遊走に関わる炎症性サイトカインの遺伝子(インターロイキン-6,インターロイキン-8)や、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの代謝や分解に関わる遺伝子(MMP-1,MMP-2,TIMP-1,TIMP-2)と歯周組織を構成する主要な細胞外マトリックスであるI形コラーゲンの発現を解析した。 LPS刺激下において、ヒト歯肉線維芽細胞はAZM濃度依存的にIL-6,-8の遺伝子発現を増強した。また、AZM濃度依存的にヒト歯肉線維芽細胞のMMP-1およびTIMP-1の発現を増強した。しかし、MMP-2の発現はわずかであり、TIMP-2には変化が認められなかった。 以上のことから、ヒト歯肉線維芽細胞に対するAZMの作用の一端が明らかとなった。
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