研究概要 |
歯周病の病態は、口腔内の宿主-細菌インターフェイスにおける細菌叢と病巣局所に誘導される免疫応答の質・大きさの相互作用により決定される。さらに患者個人の遺伝的素因が影響を及ぼすとも考えられている。本研究では、歯周治療を開始する患者の臨床試料(歯肉、歯肉縁下プラーク、末梢血)を採取・分析し、免疫学的、細菌学的、遺伝学的因子を全て考慮することで、複眼的視点から歯周病の発症・進展メカニズムの解明を目指し、歯科臨床に直結・貢献する診断法や治療法へと応用することを目的とする。 今年度は、採取した臨床試料のうち、主に歯肉について分析を行った。すなわち、歯肉試料より抽出したmRNAをRT-PCRした後、real time PCRにより、IL-1α,IL-1β,TNF-αなどの炎症性サイトカイン、IL-10などの抗炎症性サイトカイン及びIL-4,IL-12,IFN-γなどの調節性サイトカインのmRNA発現を定量的に検出し、歯周病巣歯肉中のサイトカインプロファイルの定量解析を行った。その結果、炎症性サイトカイン(IL-1α,IL1β)の検出率が高く、調節性サイトカイン(IL-4,IFN-γ)の検出率が低い傾向が見られた。 今後は、(1)各種サイトカイン量と臨床病態の主な指標の1つである歯周ポケット深さとの関連性の検討、(2)歯肉縁下プラークを分析し、歯周病関連性細菌種の定量的検出と歯周病原性の検討、(3)歯周ポケット深さなどの臨床パラメーターと免疫学的、細菌学的パラメーターとの関連性をクラスター分析あるいは多変量解析を用いて、多面的に検討する予定である。
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